
姫路レザーと栃木レザーとの違いを比較|産地とブランド・なめし方・経年変化
姫路と栃木。日本にも、世界に誇れるレザーがある
本革の産地というと、イタリアやスペインをはじめとするヨーロッパを思い浮かべる方が多いかもしれません。
欧州には世界に名だたるタンナーが集まり、革の一大産地として知られています。
けれど日本にも、世界に誇れるレザー産地・ブランドがあります。
それが「姫路レザー」と「栃木レザー」です。
革製品を選んでいると、この2つの言葉によく出会います。
どちらも日本を代表するレザーとして知られていますが、実際どう違うのか、説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、姫路レザーと栃木レザーそれぞれの成り立ちや特徴を整理しながら、なめし方・経年変化のしやすさ・向いている製品といった観点でレザーブランドの目線から違いを比較していきます。
一番大きな違いは「産地」か「ブランド」か
姫路レザーは特定の産地でつくられる革の総称であるのに対し、栃木レザーはひとつの会社がつくるブランド革の名称です。
この違いを踏まえておくと、このあとの内容が頭に入りやすくなるはずです。
姫路レザーとは|日本最大のレザー産地
「姫路レザー」とは、兵庫県姫路市・たつの市(播州産地)でつくられる革の総称です。
この2つの市には200以上のタンナー(革のなめし業者)が集まっており、日本国内で生産される成牛革のうち、実に約7割がこのエリアに集中しています。
まさに、「日本のレザーづくりを支えている産地」と言えます。
そもそも「なめし(鞣し)」とは、動物の生皮を腐りにくく、丈夫でしなやかな「革」へと変える加工処理のこと。
この工程を経てはじめて、皮は長く使える素材=革になります。
姫路が革の産地として発展した背景には、いくつもの地理的条件が重なっていました。
なめしに適した穏やかな流れと広い河原を持つ「市川」の存在、西日本で盛んだった牛の飼育により原皮となる牛皮の調達がしやすかったこと、瀬戸内海式気候による温暖で雨の少ない気候(天日で革を乾かす「革晒し」の工程に好都合でした)、そして近隣の赤穂でとれる塩を入手しやすかったことなど、なめしに必要な条件がこの土地に自然と揃っていたのです
さらに、大阪・京都といった一大消費地に近かったことも、産地としての発展を後押ししました。
姫路レザーは「なめし」のバリエーションが豊か
「姫路レザー」とひとくくりに言っても、そのなめし方はひとつではありません。
白鞣し・クロムなめし・植物タンニンなめし・コンビネーションなめしなど、複数の技法が同じ産地の中で共存しているのが姫路レザーの特徴です。
ここでは、その中でも特に対照的な2つの技法をご紹介します。
まずは、現在の主流である「クロムなめし」。
金属を使ったなめし方で、短時間で仕上げられるため量産に向き、柔軟性・染色性に優れています。
色や質感のバリエーションが豊富なのは、このクロムなめしによるところが大きいです。
一方、姫路には平安時代から続く伝統技法「白鞣し革(しろなめしがわ)」も現存しています。
化学薬品を使わず、水・塩・菜種油だけで牛皮をなめす技法で、兵庫県指定の伝統工芸品にも指定されています。
レザーの仕上がりは薄い乳白色で、使うほどに自然な艶が増していく独特の経年変化を楽しめる革です。
つまり姫路レザーは、他にも植物タンニンなめしやコンビネーションなめしなど多様な技法を持ちながらも、その中で「量産向きで色柄豊富なクロムなめし革」と「稀少で経年変化を楽しめる白鞣し革」という、対照的な個性を併せ持つ産地だといえます。
栃木レザーとは|日本を代表する国産レザーの名称
一方の栃木レザーは、姫路のような「産地」ではなく、「栃木レザー株式会社」という単一のタンナーが手がけるブランド革の名称です。
栃木レザー本社・工場は栃木県栃木市にあります。
市街地には、江戸時代に舟運で栄えた「蔵の街」の景観を今に伝える一級河川・巴波川(うずまがわ)が流れており、革づくりに欠かせない豊富な水(1日あたり約900トン)を古くからこの地で得てきました。
1937年(昭和12年)の創業当初は、実はうさぎの毛皮加工から出発した栃木レザー。
やがて1955年からはヌメ革の製造へと軸足を移し、学生鞄用の革づくりに力を注ぐ中で、植物タンニンなめしという一つの技法をひたすら磨き続けてきました。
中でも特徴的なのが「ピット鞣し(なめし)」という製法です。
巨大なプール状の槽(ピット槽)に植物タンニンを溶かした液を張り、その中に牛革を数週間から数ヶ月かけてじっくりと漬け込んでなめしていく、今では国内でも数少なくなった手法。
化学薬品を使わず、排水も薬品ではなくバクテリアの力で浄化してから川に還すなど、時間と手間を惜しまないものづくりが続けられています。
こうして生まれる革は、使うほどに色艶が深まる経年変化の美しさで、日本だけではなく、世界でも多くの革好きに愛されています。
姫路レザーが「多様ななめし方を持つ産地」であるのに対し、栃木レザーは「ひとつの技法を突き詰めた単一タンナーのブランド革」。
この違いが、そのままレザーの個性の違いにもつながっています。
姫路レザーと栃木レザーの違いを比較表で見る
ここまでの内容を踏まえて、姫路レザーと栃木レザーの違いを表にまとめました。
| 姫路レザー | 栃木レザー | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 産地の名称(複数のタンナーが存在) | 単一タンナーによるブランド革 |
| 主ななめし方法 | クロムなめしが主流、伝統技法として白鞣し革も現存 | 植物タンニンなめしに特化 |
| 色・質感の幅 | 豊富(クロムなめしにより多彩な発色が可能) | 限定的(革本来の風合いを活かす) |
| 経年変化 | クロムなめし革は起こりにくい/白鞣し革は起こる | 使うほどに色艶が深まる |
| 向いている製品 | ファッション小物・衣類・カバンなど幅広い用途 | 財布・ベルトなど、永く育てたい製品 |
こうして並べてみると、姫路レザーの強みは「産地としての多様性」、栃木レザーの強みは「単一タンナーによる一貫性」にあることが分かります。
経年変化で選ぶなら
もし「使うほどに味わいが増す革」を求めているなら、選択肢は栃木レザーか、姫路の伝統技法である白鞣し革のどちらかになります。
一般的に流通している姫路レザー(クロムなめし)は、傷や汚れに強く扱いやすい反面、革本来の質感が仕上げの奥に隠れるため、経年変化は起こりにくいのが実情です。
姫路の白鞣し革は美しい経年変化を楽しめる一方、継承する工房がごくわずかで、日常的に手に取れる製品としてはまだ稀少な存在です。
その点、栃木レザーは単一タンナーによる一貫した供給体制があるため、経年変化を楽しめる革として比較的手に取りやすいのも特徴です。
天然素材の質感や良さをそのまま生かした植物タンニンなめし仕上げだからこそ、使い込むほどに色と艶が育っていきます。
RUBATO&Co.が栃木レザーを選ぶ理由
RUBATO&Co.が長財布に栃木レザーを選んでいるのは、「永く愛用していただく製品をつくる」という私たちのブランド哲学に、この素材がまっすぐ応えてくれるからです。
栃木レザーは、繊維がしっかり締まった植物タンニンなめしならではの丈夫さで型崩れしにくく、それでいて使うほどに色艶が深まっていく。
耐久性と経年変化を、同時に永く楽しめる革だからこそ、ふさわしいと考えています。
私たちが栃木レザーを選ぶ理由については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。
【補足】コードバンという選択肢も
日本の代表的なレザーとしては、栃木レザー・姫路レザーのほかに、馬革の「コードバン」も知られています。
ごく少量しか採れない希少な素材で、「革のダイヤモンド」とも呼ばれるきめ細かい光沢が特徴です。
コードバンも、牛革である姫路レザー・栃木レザーとはまた違う魅力を持つ国産レザーのひとつです。
そのほか代表的な本革の種類や選び方についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
「国産レザー」の中身は、ひとつではない
姫路レザーと栃木レザーは、どちらも一言で「国産レザー」とまとめられがちですが、その中身はまったく異なります。
色や質感のバリエーションを楽しみたいなら、多様ななめし方を受け継ぐ一大産地の「姫路レザー」。
使うほどに育っていく経年変化を楽しみたいなら、ひとつの技法を突き詰めた単一タンナーのブランド革「栃木レザー」。
それぞれに違った良さがあるからこそ、その特徴を踏まえたうえで選ぶことが、自分に合う一枚と出会う近道になるはずです。
RUBATO&Co.は、時間とともに変化を楽しむ「時を、遊ぶ。」というテーマのもと、栃木レザーを100%使用した長財布を国内のレザー職人のハンドメイドでおつくりしています。
気になる方は、ぜひ「Smith」商品ページで詳細をご覧ください。



